あきない
先日、担当している会社の従業員と面談をしました。その方はメンタルヘルス不調で1年半ほど休職をしており、先日復職可能の診断書が出たとのことで、会社が復職判定する前に面談をして欲しいというご依頼でした。
ご本人は体調不良に至る経緯、課題、再発防止について時間をかけ、取り組まれてきたそうです。真面目な態度に胸を打たれた反面、ご自身のこだわりや信念が受け入れられなかった過去の憤りについてさぞ辛い思いをしたのだろうなと考えさせられました。
面談を終え、昼時だったので昼食を済ませようと、ある店に立ち寄りました。その店は立ち飲みの居酒屋なのですが、ランチ営業もしていて手軽に安く食事できるので一人の時はよく利用させてもらっています。そこで日替わりランチを食べながら、何気なく店に貼られた手ぬぐいに目が留まりました。
そこには、
あきない
商売はあきないという
それはおもしろくて
しかたがないから
あきないなのだ
いつもおもしろいから
笑顔がたえないから
「笑売」となる
いらっしゃいませ」
「ありがとうございます」
いつも活発だから
「勝売」となる
あきない商売を
おもしろくないと
思っているとすぐあきる
いつも不平不満や
愚痴がでて心が次第に
傷ついて
「傷売」となってしまう
こんなお店には そのうち
誰もよりつかなくなり
「消売」となって消えてしまう
「笑売」をしているのか
「傷売」をしているのか
「勝売」をしているのか
あきない商売をしているのか
いわゆる「おやじの小言」的なものは、居酒屋に貼られているのを時おり見かけます。これもその類といってしまえばそれまでなのですが、その時の私には少々刺さるものでした。
面談に来た方は当時、「傷売」になっていて、心がすり減って休むことになってしまったのでしょう。それは彼の信念や言動にも問題があったかもしれませんが、ご自身だけが一方的に悪かったわけではなく、周囲のメンバーも「傷売」をしていた結果だったのではないか、少なくとも「笑売」はしていなかっただろうなと考えました。
人が集まって組織があり、自分の考える正しさや信念は他者と同じとは限りません。そんな中で仕事をしていれば衝突が避けられない場面もあるでしょう。そんな時、反対意見を蹴散らして対立構造となるのか、健全に議論して結論を導くのか、コミュニケーションはいつも悩みの種となります。少なくとも私が関わる方々には無用に傷つくことなく仕事ができるよう支援していきたいと思います。
ところで私はあきない(仕事)を面白くてしかたがない「あきない」としてやっているだろうか。
あの時は不平不満や愚痴ばかりで「傷売」だったなぁと、日替わりのから揚げ定食をいただきながら考えてしまいました。
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