ある企業研修で思ったこと

先日ご依頼を受けた某企業の管理職研修のお話です。既に何度か実施していたため、プログラムは決まっていたのでそれを実施するというご依頼でした。先方の都合で研修時間が3時間から2時間に短縮されるとのことだったので、プログラム調整をしてから前任の実践に同席させてもらうことになったのですが、内容にちょっと驚かされました。 


 というのも、新任管理職向けのメンタルヘルス研修、いわゆるラインケア研修で時間は2時間、その中でセルフケア、ラインケア、ハラスメント、傾聴トレーニングのプログラムが詰まっていたのです。少々盛り込み過ぎではないかと、資料をもらってすぐに気づきました。話すだけなら実施は可能かもしれません。しかし、受講される方々が内容をきちんと理解し、実践で使ってもらえるようになるだろうかと心配になりました。 実際、前任者もかなりのハイペースで話し続け、終了後の感想が「全力疾走した感じ」でした。事前に先方の担当者と内容の打合せはしたはずなのに、なぜここまで大盛りになってしまったのでしょうか。 


 「全力疾走」してはみましたが・・・ 

 そう考えてはいても、既に決定しているプログラムのため、詰まっている中でも要点となるところに力点を置いて時間内に収めるために準備し、当日を迎えました。そしてなんとか「全力疾走」して研修を実施しました。担当者の方にはご満足いただけたようですし、意外にも受講後のアンケート結果も高評価をいただくことができました。ただ、私にはもやもやとしたものが残りました。 うわべだけなら理解は可能でしょう。しかし、全ての内容が「腹落ち」し、「明日から使えるノウハウ」を伝えきれた感触は私にはなかったからです。お忙しい中、受講対象者である管理職の方々の時間を拘束するのですから、その内容はできるだけ実践的な方が良いのではないでしょうか。概要を薄く広く知ってもらうことも大切かもしれません。しかし、現場で使える具体的な対処法について、納得感を持ってもらう、「これなら明日からやれそうかな」と意識を変えていただく方が有意義なのではないか、そのためには内容を盛り込み過ぎることなく、考える時間や腹落ちさせる時間が必要なのではないかと私は考えてしまいます。 


 担当者と受講者の求めるものをは違うことがある

 企業側の研修担当者の方は、通常受講者の方より研修の意義や内容について理解の深い方が多いものです。その方基準でプログラム作成すると、どうしても多くの内容を盛り込むことになってしまいます。


また、企業として、「これだけの内容の研修を実施した」という実績にもなるでしょう。しかし、受講者の中には現場で実際にメンタル不調者の対応経験のある方、困っているが知識が不足している方、メンタルヘルスケア意識の低い方など様々です。 知識の多い担当者や、経験豊富な受講者を基準とするのではなく、あまり知識が多くない、またはメンタルヘルスケア意識の低い方を基準にプログラム設計する必要があるのではないかと私は考えます。


 せめて、プログラムを決める段階で、

 「〇〇様(担当者)であれば、知識をお持ちなのでこの内容でも良いかと思いますが、受講者の方々はそれほど知識のない方もいらっしゃると思います。その場合、展開の速さについてこれなくなってしまうともったいないと思います。現場対応に難しさを感じるのはむしろそうした方々なので、受講される管理職全体の対応を底上げするためには内容を絞って実施する方が望ましいですよ」 


とボリュームダウンのご提案をしたかったな、と考えながら会場を後にしました。 

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